
現場作業と管理業務を効率化。
従業員想いの多様な取り組みで
誇りを持って働いてもらえる会社へ。
有限会社鈴木建材店
代表取締役 鈴木 徳光
1978(昭和53)年に創業した有限会社鈴木建材店は、1台のダンプで土砂を運ぶ土木事業から始まった。そのきめ細やかな仕事ぶりは近隣の地域から高い信頼を得ており、公園の整備や区画整理、住宅のリフォーム・建築、古材の販売など多様な事業を展開している。同社は2014年のICT建機導入を契機に、いち早くDX化に着手。2023年にはDX応援隊の伴走支援を活用しDXを推進。業界が長年抱えている人材不足や「3K労働」※1などを解決し、「新4K職場」※2への変革に向けた取り組みを進める。その経緯や想い、今後のビジョンなどについて代表取締役の鈴木徳光氏にお話をうかがった。
※1「きつい・汚い・危険」の頭文字を取った厳しい労働条件
※2国土交通省が「2024年問題」を契機に 3Kのマイナスイメージを払拭すべく打ち立てた 「給与・休暇・希望・かっこいい」の4つの視点から、若手人材の確保や働き方改革を目指す取り組み
-
有限会社鈴木建材店
代表取締役 鈴木 徳光 氏 -

DX化のポイント
- DX応援隊の伴走支援や助成金を活用してDXを推進
- 「サクミル」の導入で、スケジュールと日報管理を一元化
- テレワークの導入、ホームページ・SNS開設で自社の魅力を発信
従業員と同じ目線で進めた業務効率化
鈴木氏が入社した2003年当時、同社の業務はすべてアナログで行われていた。現場作業の多くが人力であり、日報や伝票の作成、記録用に撮影した現場写真も手作業でまとめていた。こうした煩雑な業務を効率化するために、鈴木氏はまず現場作業のデジタル化に取り組んだ。2014年に現場の書類業務の効率化を図るためにデジタル写真台帳と電子黒板を導入、2022年に区の助成金事業を活用しICT建機1台、2025年には新たに3台を導入した。管理ツールとしては、Googleクラウドを活用したスプレッドシートを導入してスケジュール管理を効率化。従業員同士のコミュニケーションツールには「LINE WORKS」を導入した。会計ソフトや販売管理ソフトもアップデートして管理業務の効率化も積極的に推し進めた。さらなる業務の効率化を目指した鈴木氏は、2023年、DX応援隊の伴走支援に申し込み、専門家のアドバイスのもとで業務フローを洗い出してみると、運用が非効率になっている箇所があることがわかった。

そこでまず、IT戦略マップを用いてシステム化の方法を議論。複数社のベンダー選定を経て、低額で導入可能な建設業向けクラウドサービス「サクミル」の導入を決定し、スケジュール共有と日報管理を一元化した。


クラウドツールの導入は、従業員に大きなメリットをもたらした。作業の空き時間などにスマートフォンを使ってどこからでも日報を提出できるため、現場作業後に日報提出のために事務所へ立ち寄る手間がなくなった。日本語の読み書きが難しい外国人実習生でも簡単に提出できるようになったことで言葉の壁もなくなり、実習生と事務所、双方の負担軽減につながった。
鈴木氏はこうしたDX化への取り組みをスマートフォンが普及した頃から徐々に進めたため、社内から戸惑いの声が上がることもなくスムーズに浸透させることができた。
「従業員と同じ目線で進めたのが良かったと思います。あえて期限も決めずになんとなく始めて、慣れてきたら新しい機能をアップデートしていくような感じで進めていきました。助走期間をたっぷり設けて、状況の変化に合わせて柔軟に浸透させていくことが大事だと思います。最初は難しくても、使いこなせるようになれば圧倒的に便利になると思っていました」。
リモート勤務を前提とした人材採用
技能実習生の日本語学習も支援
現場作業と管理業務の効率化を実現した鈴木氏は、人材採用・育成を一層推進する。一般社団法人 技能実習生生活支援機構(TITL:ティトル)を通して、定期的に採用している技能実習生への日本語支援を7年前からスタート。現場で活躍してもらうためには、日常生活に支障がない程度の日本語スキルが必要なことから、現在はオンラインにて会話を中心とした日本語教育を実施している。その結果、彼らの日本語スキルは上達し、日本人職人との意思疎通もスムーズになり、技術を学ぶことができている。
また、3〜4年前からリモート勤務を前提とした採用をスタート。子育て世代の女性を採用し、古材の活用方法や販売に関する調査、SNSの発信などの業務を任せている。同社では10年前から本社と資材置場をVPN※3で接続、安全にデータを共有できる環境を整えていたためテレワークの実施にも支障がなかった。
さらに鈴木氏は業務改善アンケートを定期的に実施。従業員から会社に対する不満や課題をすくい上げ、必要に応じてアップデートしている。こうした風通しの良い職場づくりは、離職率の低さにもつながっており、なかには30年以上勤務する従業員もいるという。人材の入れ替わりが激しい土木業界の中で異例と言えるかもしれない。
「リモート勤務にすることでコミュニケーション不足を指摘されることがありますが、従業員の働きやすさを考えればリモートの方がメリットははるかに大きい。採用できる人材の幅も広がります。コミュニケーションの促進という点ではまだまだ課題が多いのも事実ですが、居心地の良さを感じてもらえる会社になっていると思います。ICTの導入も同様ですが、DXを通して従業員の意識やモチベーションを上げる取り組みも全員でやっていきたいという想いがあります」。
※3 Virtual Private Networkの略。安全にデータを共有するために開発された技術。

働いてくれるみんなが
誇りを持って仕事ができるように
さまざまなデジタル技術を導入してきた同社は、土や古木材の販売、公園・道路などの公共工事、住宅の設計・施工といった仕事を請け負っている。IT建機の導入やリモートワークの導入、外国人技能実習生の受け入れ等、働く人にも地球環境にも優しくあれるSDGsを目指した取り組みを積極的に展開し、その様子をHPやSNSを通じて発信している。
将来的には、資材置き場でのギャラリーやワークショップの開催も計画し、さらなる販路拡大と技術の向上を目指す鈴木氏に、中小企業がDX化を行うことの意義について、改めて尋ねた。
「DX化はあくまで業務改善の手段のひとつ。一生懸命に取り組むものではなく、当たり前にやってきていることの積み重ねだと思います。効率化させるために必要なものを考えて、そこにあるものをタイムリーに使っていく。それを、若い人たちがうまく利用してくれれば次につながっていくのだと思います。働くみんなに自分の所属する会社に誇りを持って働いてもらうための手段として、これからも使っていきたいですね」。



取材先企業からのアドバイス
すぐに結果を求めるのではなく、スケジュールも資金もできる限り余力を残して進めることがポイントです。現場と同じ目線で身の丈にあった取り組みをやっていくこと、補助金などの情報にアンテナを広げておくことも大事です。社会のニーズを考えても、DXを導入しない選択肢はないと思います。ぜひ検討してほしいですね。
企業情報 | |
---|---|
企業名 | 有限会社鈴木建材店 |
本社 | 東京都江戸川区篠崎町7-11-5 TEL: 03-3670-5253 |
代表者 | 鈴木 徳光 |
設立 | 1978年5月 |
資本金 | 20,000,000円 |
従業員数 | 24名 |
URL |
HP:https://skenzai.jp/ Facebook: https://www.facebook.com/suzukikenzaiten/ instagram:https://www.instagram.com/sk_sdgs/ |