導入企業インタビュー

自社の規模に合った
生産管理アプリで業務を劇的に改革。
DXで会社の若返りを。

株式会社フジジョイフル工業
業務グループ 小池 妙

株式会社フジジョイフル工業は、1975年に創業した金属加工会社。建築金物、家具金物の製造販売を行なっており、2000年からはローラーチェーンやスプロケットなど工業用製品の輸入販売事業も手掛けている。2007年に江戸川区優良企業として表彰された同社は、2023年頃からDXの導入をスタート、江戸川区中小企業DX応援隊の伴走支援を受けながら業務の効率化を実現させている。どのような背景で導入を決意し、どのように推し進めていったのだろうか。業務グループの小池妙氏にお話をうかがった。

  • お話を聞いた方

    株式会社フジジョイフル工業
    業務グループ 小池 妙 氏

  • 小池 妙
画像
株式会社フジジョイフル工業本社
画像
作業場での様子

DX化のポイント

  • 紙の書類効率化などを念頭に、江戸川区中小企業DX応援隊のセミナーに参加
  • アジャイル開発の業者を選定し、会社の規模にあった生産管理アプリを独自に開発
  • 高齢の従業員でもスマートフォン感覚簡単に使えるツールを活用

紙の書類の効率化と多品種少量生産への対応

小池氏がDX導入を決意した理由のひとつに、紙の書類の効率化があった。入社した2018年当時、同社では、生産管理、受発注、日報など日常のほとんどの業務で紙の書類が使われていた。それらの書類はファイリングして保存されていたものの、さまざまな種類のものが煩雑に管理されていたため、過去の作業内容の掘り起こしや書類の検索に多くの時間を要していた。そもそもファイリング自体にも相当の時間を要するため、業務を一人で担っていた小池氏にとっては非効率そのものだった。さらに、現場が多品種少量生産にシフトしていたこともあり、製品の種類が増えることで工程が複雑化し、生産管理も一層難しくなっていた。そのうえ品物の名称も人によってバラバラだったので、作業の実態を把握するために現場に何度も足を運ばなくてはならなかった。こうした自身の時間と手間を減らすために、小池氏の中で「業務を効率化したい」という想いが日に日に強くなっていく。しかし、何から始めればいいのかがわからない。さらに、コスト面や業務への影響、人員不足などの問題もあり、なかなか一歩が踏み出せずにいた。そんな小池氏の背中を押したのが、2023年11月に開催した江戸川区中小企業DX応援隊のセミナーだった。
「他社の事例や実際にDXを導入された経営者のお話を聞いて、そこまではできないかもしれないけれど近いところまでは実現できるかもしれないと思いました。応援隊の皆さんに伴走しながら支援していただける点にも魅力を感じて、すぐに申し込みました。DX化に取り組むことで従業員の自主性も育てたいという想いもありました」。

画像
小池氏も参加した2023年11月21日開催「江戸川区中小企業DX応援隊セミナー」

独自の生産管理アプリを開発、作業内容をグラフで見える化

応援隊のアドバイスのもと、小池氏がまず取り組んだのは現状の業務の洗い出しである。ひとつひとつの業務を徹底的に見直し、取り組みの優先順位を明確にした。市場にある生産管理システムをリサーチしてみると、既存のものは200〜300万円するものがほとんどで、とても手が届く金額ではなかった。小池氏は自社の規模に見合ったミニマムなシステムを一から開発することを決意し、開発を依頼。およそ半年の時間をかけて、Googleシステムを活用した独自の生産管理アプリを開発した。このアプリは、作業入力フォームに作業の実績(受注番号、担当者、ステータスなど)を入力すると、生産が完了した作業の内容がデータとして自動的に蓄積される。その蓄積されたデータは「Looker Studio」とよばれるツールでグラフとして可視化され、各工程の生産数や進捗状況、各製品の生産時間などを確認することができる。受注データも簡単に入力できるようになっており、「弥生販売」で作成した受注データをGoogleスプレッドシートに貼り付けるだけで自動的に作業入力フォームに反映されるようになっている。さらにブラウザから簡単に作業データの閲覧や編集ができるため、仮に作業で何か問題が発生した場合でも過去のデータを振り返ることで原因がスムーズに解明できるのも魅力だ。現場に設置したタブレットからしか入力できないため顧客情報などが外部に持ち出される心配もない。小池氏はこのグレードの高い生産管理アプリを江戸川区のデジタル技術活用促進助成事業(IT導入)を活用して、およそ21.7万円で実現した。Googleシステム※1自体は無料※2で利用でき、システムのカスタマイズ費用は助成金の活用により出費を抑えられたため、その他必要なのは端末の購入費、Wi-Fi環境の整備、そして月額の通信費のみ。初期投資を抑えながら、ローコストでの導入を実現した。
「最初はコスパよく使えるもので始めたいと思っていたので、追加料金のかからないアジャイル開発※3という手法で開発を進めてもらえたことが大きかったです。担当者の方の現場への理解も深く、どういうシステムにしたいのか相談しながら丁寧に進めることができました。IT分野は進化のスピードが非常に早く、10年先を予測するのは難しいと感じています。そんな中でも、今回スムーズに導入できたのは、皆様のサポートがあったからこそです。とても助かりましたし、感謝の気持ちでいっぱいです」。

画像
画像
生産管理アプリによってグラフ化された作業内容
画像

※1Google社が提供するアプリ・サービスのこと。

※22025年11月取材時点での情報。

※3アジャイル開発…システムやソフトウェア開発において、短い時間で開発とリリースを繰り返す手法のこと。

日報はスマートフォン感覚で作成、高齢の従業員には動画も交えて指導

非効率だった生産管理を劇的に変えたこのアプリは、毎日の終業時の負担になっていた日報作成も一変させた。毎週月曜日の朝に、前週の作業をグラフを見ながら振り返ってもらい、その週の目標をあらかじめ設定した「作業の無駄を減らす」「作業手順の見直し」「工具・在庫の配置改善」などの選択肢の中から選べるようにした。スマートフォン感覚で気軽に週報が作成できるため、文章を記入する手間もなければ口頭で目標を述べる必要もない。

画像
(左)週報はスマホ感覚で簡単作成
(右)生産管理にはタブレットを活用

アプリには作業風景を撮影した動画データも蓄積できるため、作業の振り返りや新人社員のための作業マニュアルとしても活用できる。アプリを上手に使いこなせない高齢の従業員には、DXの仕組みがわかる簡単な動画をYouTubeで見せてから使い方を指導するなど、時間をかけながら現場に浸透させていった。一方で、請求書や伝票の処理は従来通り紙を使っている。これはもともと同社では伝票の数量が多くはなかったためだが、取引先の環境次第では請求書の電子化なども視野に入れているという。いずれは、以前の見積書などもデータ化していきたいと語る。
「DXというとハードルが高い印象がありますが、ルーティーンになっている仕事をどんどん見直して自動化できれば、空いた時間に商品開発などの新しいことにチャレンジできます。やってみたいことがあるのに時間がない。時間がないなら効率化して時間をつくればいいんです。そうした視点を持っている経営者がいる会社さんはとても強いと思いますね」。

画像

取材先企業からのアドバイス

経営者が高齢になると会社も高齢化してきます。会社の若返りを目指すなら体力を鍛え直す必要があります。DXもそれと同じような感覚で、新しいチカラを少しずつ取り入れていくことで会社が活性化していきます。応援隊のような支援サービスを利用すれば問題なく取り組めると思います。まずは動いてみることが大事ですよ。

企業情報
企業名 株式会社フジジョイフル工業
本社 東京都江戸川区春江町1-1-5
代表者 代表取締役 佐藤 寿良
設立 1975年10月
資本金 10,000,000円
従業員数 7名
URL HP:https://www.fjk-tokyo.co.jp/