作業データを会社の資産に。
図面を起点としたDXで、
技術継承と業務効率化を実現。
佐藤電研株式会社
佐藤 駿吉
1948年(昭和23)、バフ研磨専門※1の町工場として産声をあげた、佐藤電研株式会社。テレビスタジオや舞台等で使用されるアルミ製反射鏡やヘラ搾りなどの高品質の製品を一貫生産によって生み出している。顧客のニーズに合わせて事業の幅を広げてきた同社では、2022年頃からDXを導入。技術継承、業務効率化に活用している。導入の背景や経緯、取り組みの内容、今後のビジョンなどについて、担当の佐藤駿吉氏にお話をうかがった。
※1布やフェルトなどの柔らかい研磨輪(バフ)に研磨剤を付けて、金属や樹脂の表面を磨き、光沢を出す仕上げ加工
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佐藤電研株式会社
佐藤 駿吉 氏 -
DX化のポイント
- 図面を起点に製造情報を一元化する「ズメーン」を導入、技術継承を加速
- 販売管理を効率化する「board」を導入
- セミナーや勉強会に積極的に参加し、他社の事例を把握
技術継承と生産管理の効率化を
佐藤氏が入社した2022年当時、工場はすでに半機械化されていたが、受発注の管理や伝票等の処理はほぼ手作業で行われていた。前職で大手製薬会社に勤めていた佐藤氏は、その環境の大きな違いに衝撃を受け、入社した瞬間から、「すぐに効率化しないといけない」という危機感を持ったという。社内には中小企業向けの事務用パソコン「事務コン」が導入されていたが、過去の作業履歴をキーワードで検索することができず、作業の振り返りやデータの取り扱いに問題を抱えていた。そのうえ、印刷した伝票を郵送する切手代などのムダな費用もかかっており、システムの変更は急務だった。さらに、佐藤氏の決意を一層高めたのが「技術継承」である。同社の職人は50代から70代と高齢者が多く、若い職人は一人もいなかった。ベテランの職人が辞めてしまえば作業のノウハウや熟練の技を次世代に伝えることができない。作業内容をデータ化して「資産」として残しておくことも必須の課題だった。しかし、自分の仕事もしながら業務効率化と技術継承を同時に進めていくのは難しかった。こうした現状を改善するべく、佐藤氏は江戸川区中小企業DX応援隊が主催するセミナーに参加する。
「応援隊のセミナーに参加する以前に東京都が主催する勉強会にも参加していたので基本的なDXの知識は持っていました。応援隊の皆さんから他社の様々な事例を聞いて、やってみようと決心しました。DX応援隊の伴走支援内容の1つであるIT戦略マップを策定して業務の課題を洗い出し、技術継承と生産管理の2つの視点から取り組むことにしました」。
職人には現場作業に集中してもらいたい
製造現場の効率化を目指す佐藤氏がまず注目したのは、生産管理システム「ズメーン」。ベンダーに来社してもらい、DX応援隊のメンバーとともにシミュレーションを行ったうえで導入を決めた。「ズメーン」は、図面にあらゆるデータを紐付けて管理する製造業向けのクラウドサービスで、見積書、指示書などの製作に関わる情報を一元管理できる。過去の作業はすべてデータとして蓄積されるので、作業の振り返りや図面の検索がスムーズにできる。そして何よりも、ベテランの職人が培ってきた経験やノウハウを、図面や写真などと一緒に共有できるので、技術継承の精度が格段に上がる。「ズメーン」は工場にあるタブレットからでも閲覧できるようにしているため、職人たちは図面を適宜確認しながら作業を進めることができる。作業の進捗状況や納期の変更などの情報も共有できることから、職人が手持ち無沙汰にならずに自主的に仕事を進めるようになった。納期遅れや作業ミスなどのエラーも導入前より減少している。導入には、江戸川区のデジタル技術活用促進助成事業(IT導入)を活用し、低コストで実現。現在は月額3万円のコストで有効に活用しており、いずれは、タブレットのカメラで作業風景を動画で記録していくことも計画しているという。
次に導入したのが、「board(ボード)」と呼ばれる販売管理システムだ。受発注した作業の情報を入力すると案件ごとに番号が紐づけられ、見積書や請求書、納品書などを自動で作成・管理してくれる。
「複雑な設定になっているのでシステムを使いこなせるのが私しかいないのが課題ではありますが、職人には現場作業に集中してもらえるので良かったと思っています。納品書も家のパソコンからそのまま取引先に送ることができるので会社にいなくても作業ができる。私自身の効率もだいぶラクになりました。時間にゆとりができた分、現場作業に入ったりしています」。
「データ×AI」を活用した取り組みも
技術継承と生産管理業務の効率化を実現する「ズメーン」と、販売管理を効率的にする「board」を導入することで、同社のDX化を進めていった佐藤氏。今後は、蓄積した作業データを使ってAIを有効的に活用していきたいと考えている。例えば、過去のデータをAIに読ませることで最適な製品の加工法を開発することもできる。AIで機械を自動化できれば、技術もさらにスムーズに継承できる。試作品の金型をつくるための3Dプリンターの導入や、製造業に関わる研究開発など、ビジョンはどんどん広がっている。
「私たちは創業時から他者貢献を理念の一つに掲げているので、これからも社会のニーズに合わせて柔軟に事業を展開していきたいと思っています。DXという土台がしっかりと確立されているので自信を持って成長できます。採用にも力を入れていきたいですね」。
取材先企業からのアドバイス
DXと聞くと、話が大きくなりがちですが、要は「考えるきっかけ」だと思うんです。システムを少しだけ変えるとか、できるところから始めるとか、それぐらいの感覚でいいんじゃないですかね。セミナーや勉強会に参加して、自社の規模にあった事例を知ることも大事だと思います。
| 企業情報 | |
|---|---|
| 企業名 | 佐藤電研株式会社 |
| 本社 | 東京都江戸川区中央4-16-29 |
| 代表者 | 代表取締役:佐藤 聖之 |
| 設立 | 1948年 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員数 | 6名 |
| URL | URL:https://www.s-denken.co.jp/ |